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本セミナー開催に際して、本年度開催された2006年ワールドカップサッカードイツ大会は日本中をテレビの前に釘付けにしたワールド大会であったが、前評判の割には日本サッカーは6月12日(月)、オーストラリアに1−3で敗北し、クロアチアに0−0の引き分け(6月18日、日曜)、ブラジルには1−4と完全敗北(6月22日、木曜)してしまった。様々に取り沙汰されているが、学会として専門的な立場からはっきりと検証する必要があるのではないかと思い、このような企画が考えられた。
先ず、司会の鶴原先生から本セミナー開催の趣旨が説明され、続いて講師の先生方のプロフィールが簡単に紹介された。最初に登壇されたのはびわこ成蹊スポーツ大学の松田先生である。氏はユースサッカーにおいては第1人者の指導者であり、プロサッカー選手の井原選手を育てた人でもある。氏は先ず、ワールドカップサッカーの歴史について簡単に触れられ、日本がフランス大会から今回で3回目の出場であることを強調された。話が進むうちに、本テーマの敗因についてジーコ監督(松田先生のジーコ評は長島茂雄氏に例えられた)の采配はさておき、最も重要な初戦のオーストラリア戦に対して楽観しすぎた点にあること、つまり、戦略的にあまりにも丸裸の日本チームを相手に露呈させた点であることを説明された。我々聞き手はなるほどと納得した。さらに松田先生は、新しいオシム監督についても話が及び、カードゲームが強く、日本びいきで、走るサッカーを提唱するオシム監督は、日本人としてのアイデンティティを誇れるサッカーを目指すことができるのではないかと結ばれた。これは松田先生も目指している指導体系の神髄と思われます。
次に、愛知学院大学の境田先生が登壇され、氏は現在の横浜マリノスの前衛である日産自動車サッカー部でプロとして活躍され、その後、名古屋グランパスエイトの強化担当推進部長として活躍され、多くの有名な国内、国外のプロ選手との交渉や監督との接点に力を注いできましたが、現在は母校である愛知学院大学の教員としてサッカー部の指導をされています。今回のワールドカップサッカードイツ大会の日本の敗因は、やはり重要な初戦のオーストラリア戦を勝てると踏んだ侮りであり、大会前のドイツとの試合に2−2での引き分けた奢り、さらに初戦に対するコンディショニングの失敗を挙げられた。そして世界に通用するフィジカル、タフさを高めること、つまり走りまくるサッカーをし、したたかな判断力を持たなければ世界には通用しない点を強調された。
最後に名古屋大学の布目先生が登壇され、氏は名古屋大学でバイオメカニックス分野の研究に従事され多くの論文を発表されている。もちろん名古屋大学サッカー部の顧問でもあります。実は、氏の今回の内容は、体育の科学(Vol.56, p819-825, 2006)に掲載された内容を分かりやすく、さらに肉付けされて話された。今回のワールドカップサッカードイツ大会ではミドルシュートの得点が多かったことを冒頭で説明され、そのミドルシュートについてバイオメカニックス的にアプローチされた成果を話された。先ず、ボールに回転のないミドルシュートを蹴ると、空気抵抗による影響で予測できない挙動を生み出し、それがキーパーを翻弄する結果となり得点に結びつくという構図である。一見キーパーのミスに思えるようなボールであるが、実際ビデオで説明されるとボールの変化がよく分かり、なるほどと思わされた。そして、実はこの原因が新しいボールになってから良く起きるようになったことも補足された。さらにはこのような回転のないフラットなボールを蹴るメカニズムまで説明され、その指導法まで言及された。特に、後ろで聞いていた学生達には非常に受けていた。
3名の講師の方の話が終わり、司会の鶴原先生からフロアの方に対して質疑応答が求められた。3名の講師の方に満遍なく質問がなされ、最後に本セミナーのまとめとして、司会者自身がマスコミに踊らされた1人であるが、学会として今回のワールドカップサッカードイツ大会の敗因と将来的な展望を検証できたことは有意義であった点を述べられて幕を閉じた。
(企画委員長:藤井勝紀)